ハッピー*ライフ
笑顔の裏側1

 
 

 
 あなたの笑顔の裏側にいつも何があったのでしょうね。
 
 嬉しくないのに笑ってたのかもしれませんし
 
 何かいい事があって本当に笑ってたのかもしれないし……。
 
 あなたが心から笑うと僕も嬉しい……。
 
 あなたの喜びの中にこれからは 僕 も共にいられるのでしょうか……。

 
 こんにちは! 守です。
 季節はすっかり夏ですね。去年は台風の最中での海水浴で、僕は隆二さんに迷惑をかけてしまいましたっけ。
 でも僕にとっては忘れられない温泉旅行でもありました。
 ……また隆二さん達と旅行行きたいなぁ……。
 
 僕は今、汗をタオルで拭きながら、強い日差しの中を右手にお土産と左手に地図を持ち、とある脚本家の先生の家目指して歩いています。今日は本当に蒸し暑いです。
 
 あ、ちなみに脚本家の先生と言っても花園先生じゃありませんよ?
 この度僕はある小劇団のお芝居に出ることになりました。
 僕の養成所時代の友達の香山くんが代表の小劇団でして名前は「劇団イルカ」と言います。
 イルカの劇団員で資金をかき集め、自分達で場所を借りて、照明、演出、音響などをそれぞれが担当して進行しています。
 メインのお芝居も稽古を繰り返して今日まで来たのだそうです。
 しかし、会場も無事借りれて、それぞれの分担も決まりほっとしていたのもつかの間、キャスト兼雑用係りの劇団員が体調をくずして寝込んでしまい、ピンチヒッターとして急遽僕が借り出されたのです。




「守、舞台やるんだ?」
「はい」
 朝の食卓。今日は隆二さんちにお泊りです。
 彼の家のダイニングキッチンのテーブルで隆二さんが目玉焼きに手を伸ばしながら言います。
「へーいいなぁ……。僕も舞台に立ちたいな」
「何言ってるんですか〜!隆二さんなんて西映映画主演で、今全国公開じゃないですか!」
 隆二さんはドラマを幾つもこなしているうちに、とうとう主役に抜擢され、それも好評でそれからは駆け上がるように幾つもの映画にも出演、とうとう今年になって映画の主演を勝ち取りました。
 第二次世界大戦に生きた軍人さんの物語で、相手のヒロイン役は隆二さんが有名になったきっかけのドラマで共演していた啓子さんです。
 彼女との演技は息もぴったりで、映画を観に行った僕はその映画にのめり込んでしまい、ラストシーンで感動して映画館の中で泣いてしまいました。
 一緒にいた隆二さんと僕は映画が終わった後あっさりとファンに見つかり、(隆二さんが見つかったと言うのが正しいです。)僕は映画の余韻に浸る時間もなく、涙ぐんだまま隆二さんに手を引っ張られ、追いかけて来るファンを振り切りました。
 
「舞台観にいきたいな」
「ホントですか〜?!嬉しいです!友達曰くあまり広い会場ではないらしいんですけど」
 僕は今や映画俳優の隆二さんに僕らの芝居を観に来てもらえるなんて、と恥ずかしいような嬉しいような複雑な気持ちになりました。
 けれどそんな僕の気持ちに全く気づかないのか
「僕はサスペンスが大好きなんだ。楽しみだな」
 と隆二さんは出来上がったチラシを眺めて嬉しそうでした。
 そうなんです。今回のお芝居はミステリーなのです。
 でもって一番のミステリーは、もといっ問題は、もう開演まで10日位しかないのに、問題の脚本が最後までできてないという事なのです。
 僕は疑いをかけられる役らしいのですが、あまり出番はありません。
 だから裏方が多くて雑用係りなんですね。
 
 僕の手には今、先生の大好物だという『イチゴタルト』があります。
 どうやら脚本家の先生を急かすのが僕、雑用係りの急務でもあるようです。
 以前「帰還」の脚本家の花園先生の所に行った時みたいに、ケーキ代と交通費のお金を渡されデパ地下でそれを買い、今回は瑠璃さんがいないので一人で電車を乗り継いでここまで来ました。

 しかし……どうしてまだ一度も会った事も無い僕が先生に会わなきゃならないんだろう……。

 以前の雑用係の彼以外先生に会った事はないんだろうか……。
 何でも脚本家の先生は凄く面白い脚本を書く人なんだそうですが、少し変わり者らしいのです。


 あ〜あ……また変わり者か……。


 僕は思わず遠い目をしてしまいました。
 
 もしかして前の雑用係の人が体調を崩したのは……。
 と僕の中でいや〜な予感を感じてたりしました。


 先生の家は一戸建てのコンクリートの家でした。
 緊張した僕が玄関に立ちベルを鳴らすと、割とあっさり家の中の人が出てきます。
 
「は〜い♪ こんにちは〜!」
 明るい口調の女の人が笑顔で玄関にすぐ出てきたので、僕は内心ほっ、としました。
 以前、脚本家の先生の家に瑠璃さんと伺った時「帰還」の脚本家、花園先生は、とても変わった人で、僕は彼とどう接したらいいか困り果てました。
 あの時は瑠璃さんがいたからいいようなものの。今回は僕一人です。
 脚本家の先生を知っている人に同行して欲しいと香山くんに頼んだのですが、前の雑用係りに任せっきりで、彼は家すら知らなかったそうです。
 それでも香山くんは最初は一緒に来てくれると言ってくれたのですが、途中までできている台本を読んで稽古をしたり、舞台準備や手配、彼は音響でもあったのでそれの調整などをして作業が深夜にまで及び、連日疲れ果てている彼を見ていたら申し訳なくて、無理に彼を連れ出す気がしなくなってしまいました。
 彼の熱意といいますか……のんびり屋の僕には真似できないその情熱。それに胸を打たれてしまいました。
 
 僕もみんなの力になりたいな……。

 
「あの、こんにちは! 都先生に会いに来ました! 以前こちらに伺った者が急病で来れなくなってしまって。今度から僕が来る事になりました」
「えーそうなんですかぁ〜? まぁ、いいわ、上がって〜」
 フリフリエプロンをつけたお手伝いさんらしき彼女が僕を中へ通してくれました。
 目的の部屋へ行くまでに廊下から見えた部屋にはかわいらしいぬいぐるみやファンシーなものが所狭しと置かれています。
 僕はそのままリビングへ通されます。 ここもなんだかファンシーです。

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始まりましたサマスぺ第2段!夏にやれて良かったな☆かにゃん!!
(去年のサマスぺを知る人は微笑?)
今回はまた〜りといい風味で日常をだらだらと(また長いのかよ;)